凶漢−デスペラード
上原と話しをして気付いた点は、この商売はかなり美味しいという事。
だからこそ、道玄坂界隈に無数の風俗店が犇めきあっているわけだ。

それでも、ここ何年かは風営法が年々厳しくなって来たせいで、以前程の客足ではないらしい。

フェアリーテールは会員制の高級デートクラブだから、余りそういった影響は受けていない。
何しろ、渋谷署は勿論の事、警視庁の幹部クラスまで顧客に入っている。
前のオーナーが相当やり手だったのだろう。

竜治は自分の懐に入って来る札束の勘定をしてみた。
シャブ屋のパシリからいきなりのジャンプアップ。
つい何時間か前迄は、無気力の塊になっていた心の中に、突然命を吹き込まれたような気分になった。

「早速明日から営業再開だ。」

上原にそう言って、女の手配を任せた。

マークシティを抜け、ハチ公前に出ると、ジュリが大きな紙袋を二つ抱えて立っていた。
ジュリも竜治の姿に気付いた。
互いに歩み寄る感じで、どちらからともなく、声を掛け合った。
「寝てたんじゃなかったのか?」
「着替えが無いとね…」
そう言えば着替えを取って来ると言っていたのを思い出した。

「腹、減らないか?」
「さっき、マック食べた。あっ、お金ありがとう…助かった。」

信号が青になる。
身動き取れない程の人の集団が一斉に動く。

ジュリの腕が竜治の右腕に絡んで来た。
身体を密着させ、人込みから身を避けようとしてるかのようだ。

「持ってやるよ。」

ジュリの手から紙袋を取った。

「結構重いな。」
「いろいろ詰め込んであるから。」
「買い物、付き合わねえか。スーツ買う事になっちまって……」
「うん、いいよ。何処にする、マルイ?パルコ?」
「どっちも行った事ねえ。」

ジュリは急に嬉しそうな顔をし、竜治の腕を引っ張るようにしてマルイの方に向かった。
< 15 / 169 >

この作品をシェア

pagetop