凶漢−デスペラード
カチン、という乾いた音が二度、三度とした。

一呼吸置いてから銃声がした。

火を噴いたのは竜治のオートマチックだった。

男は悲鳴を上げながら部屋の中を転げ回った。

膝にでも当たったのか、足を押さえて喚いている。

竜治は男の銃を取り、隣の部屋を確認した。

トイレ、バスルーム、クローゼット……

他には誰も居なかった。

のたうち回っている男に近付き、竜治は銃を向けた。

「河田は何処だ!俺の女を何処にやった!」

襟首を掴み、銃口をロン毛のこめかみに当てた。

男はただ泣き喚くばかりだった。

「静かにしろ!言われた事に答えるんだ!」

「勘弁してくれ…知らねえんだ、本当だよ…信じてくれ、頼む殺さないでくれ…お願いだ…」

拳銃の乾いた発射音が再び響いた。

「ギャアッ!」

もう片方の脚を撃った。

「ちゃんと答えろ!答えたら救急車を呼んでやる。」

そう言って、今度は男の股間に銃口を押し付けた。

ロン毛のズボンが濡れ出した。

「小便漏らせるうちはいいが、このままだと玉もろともおさらばになるぞ…」

「わ、判った…止めてくれ…喋る、喋るから…河田はここから30分ばかり離れた所に居る…」

「そこ迄案内しろ。」

「そ、そんな、死んじまう…勘弁してくれ、頼む救急車を…」

「河田の所の近く迄行ったら、すぐ電話してやる。」

そう言うと、竜治はロン毛の襟首を掴んだまま引きずり、部屋を出た。

車の助手席にロン毛を乗せたまま、右手一本で運転をした。

左手は拳銃を握り、銃口を男の頭に向けている。

様子を見る限り、抵抗しそうな感じはしないが、油断はならない。

ロン毛の指示通り道を走らせているが、男が言うそれらしき廃屋が見えて来ない。

走らせて既に30分は過ぎている。

「あそこ…」

男が突然、指差した。

雑木林の切れ目みたいな所に、ぽつんと目立つ廃屋があった。

周囲に人が住んでいそうな建物は無い。

ケータイを取り出し、浅井を呼び出した。

この場所を早口で伝えると、竜治は、

「お前はこのままでいろ。」

「救急車は?」

「心配すんな、今すぐ来るよ…」

と言って引き金を引いた。

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