凶漢−デスペラード
「この、死に損ないがぁ…」
竜治は、河田の首を絞めようとした。
今度は肩に痛みが走った。
河田の右手にナイフがあった。
組み合ううちに河田が馬乗りになった。
ナイフの刃先が喉元に迫っていた。
懸命に河田の腕を掴み、何とかナイフを奪い取ろうとした。
血で、掴んでいた手が滑った。
ナイフが竜治の顔面を掠めた。
左の耳に激痛が走った。
生温かいものが頬を濡らしている。
河田がナイフを両手で握り変え、真っ直ぐに振り下ろして来た。
咄嗟に身体を捻った。
ナイフは僅かのタイミングで狙いを外れ、肩に当たり、刃先が流れて背中に一筋の傷を作った。
勢いでナイフは床に突き刺さった。
河田の口から大量の血が吐き出され、竜治の顔にシャワーのように降り懸かった。
互いに全身が血みどろになっていた。
二人共、既に僅かな力も残ってなく、相手の首を絞める事も叶わない。
竜治の意識が霞み始めた。
目に血が入り開けられない。
自分の身体にのしかかっていた河田の重みが、不意に軽くなった。
見えにくい目で僅かに確かめると、河田が床に刺さったナイフを抜き取り、竜治に最後のとどめを刺そうとしていた。
死ぬ……
失いかけた意識の中で、竜治ははっきりとそう感じた。
逆手に持ち替えたナイフを振り上げた河田だったが、しかし、それを突き刺すだけの余力がもう無かった。
そのままの姿勢で、ゆっくりと前のめりに倒れた。
竜治は、身体を横に転がし、何とか起き上がった。
膝立ちになって、河田の方を見た。
妙な格好で倒れている。
膝と手で、にじり寄るようにして久美子の側に行った。
抱き起こそうとした。
無理だった。
久美子をこの場から動かすどころか、自分の身体すら思うように動かせない。
久美子…死ぬな…
大丈夫だ……
お前は助かる……
竜治は久美子を抱くようにして横たわった。
耳鳴りが止まり、遠くからサイレンのような音が聞こえてくるような気がした。
大丈夫…だいじょうぶ……
竜治は眠った……。
竜治は、河田の首を絞めようとした。
今度は肩に痛みが走った。
河田の右手にナイフがあった。
組み合ううちに河田が馬乗りになった。
ナイフの刃先が喉元に迫っていた。
懸命に河田の腕を掴み、何とかナイフを奪い取ろうとした。
血で、掴んでいた手が滑った。
ナイフが竜治の顔面を掠めた。
左の耳に激痛が走った。
生温かいものが頬を濡らしている。
河田がナイフを両手で握り変え、真っ直ぐに振り下ろして来た。
咄嗟に身体を捻った。
ナイフは僅かのタイミングで狙いを外れ、肩に当たり、刃先が流れて背中に一筋の傷を作った。
勢いでナイフは床に突き刺さった。
河田の口から大量の血が吐き出され、竜治の顔にシャワーのように降り懸かった。
互いに全身が血みどろになっていた。
二人共、既に僅かな力も残ってなく、相手の首を絞める事も叶わない。
竜治の意識が霞み始めた。
目に血が入り開けられない。
自分の身体にのしかかっていた河田の重みが、不意に軽くなった。
見えにくい目で僅かに確かめると、河田が床に刺さったナイフを抜き取り、竜治に最後のとどめを刺そうとしていた。
死ぬ……
失いかけた意識の中で、竜治ははっきりとそう感じた。
逆手に持ち替えたナイフを振り上げた河田だったが、しかし、それを突き刺すだけの余力がもう無かった。
そのままの姿勢で、ゆっくりと前のめりに倒れた。
竜治は、身体を横に転がし、何とか起き上がった。
膝立ちになって、河田の方を見た。
妙な格好で倒れている。
膝と手で、にじり寄るようにして久美子の側に行った。
抱き起こそうとした。
無理だった。
久美子をこの場から動かすどころか、自分の身体すら思うように動かせない。
久美子…死ぬな…
大丈夫だ……
お前は助かる……
竜治は久美子を抱くようにして横たわった。
耳鳴りが止まり、遠くからサイレンのような音が聞こえてくるような気がした。
大丈夫…だいじょうぶ……
竜治は眠った……。