凶漢−デスペラード
第三章…飛躍

1…オープン

実際の営業開始は翌日からになった。

前の店から在籍していたコンパニオンに、上原が連絡をすると、女達は皆すぐにやって来た。
金払いの良い上客が多い店だから、女達も再開を喜んだ。

ジュリ達は、上原がピックアップした名簿を元に電話を掛けまくった。
各自に店で作らせたケータイを持たせ、近くのマン喫やネットカフェから掛け
まくらせると、入れ喰いのように客が引っ掛かった。

竜治は、客引き連中にも手を打った。
マージンを他所より高く出すからと伝えた。
彼らにすれば、上玉揃いの上に、紹介料が良ければ、喜んで客を回してくれる。
澤村の威光というものも確かにあるが……

動き出した車輪は、その速度を一気に早めた。

初日の売り上げを道玄坂のマンション迄届けに行った時は、前日から余り眠っていないにも関わらず、竜治の全身には疲労感がまるで無かった。
高揚した感覚がこの二十四時間というもの、ずっと続いている。

こんな感覚は初めてだ……

初日の総売り上げ280万余り…
女達へのバックが200万近くになったが、それでも初日で上原の月給と、事務所の家賃が稼げた。

竜治は、エンジェルキスをオープンするに当たり、従来より、コンパニオンへのバックを高くした。
条件を良くする事で、よりハイレベルなサービスをコンパニオン達に義務付けさせられるし、よりハイクラスな女が集められる。

渋谷、いや東京で一番のデートクラブにしてやる……

自分にそんな上昇思考が湧くなどと思ってもいなかった。

悪くないな……

道玄坂を登りながらそんな事を思ったりした。

澤村のマンションに行くと、妹の久美子が竜治を出迎えた。

妙な緊張感を抱かせる女だ…

「ご苦労様。外、寒いでしょ、中に入って少し休まれたら?」

「いえ、ここで構いません。売り上げを届けに来ただけですから。」

「遠慮なさらなくてもいいのよ。」

久美子は、社交辞令ではないと竜治にも判る位に残念がった。

売り上げを渡すと、竜治はそそくさとマンションを後にした。
目の前にした久美子からなんとも言えぬ匂いがした。
竜治の五感をとろけさすような力を持っていた。

官能的…清楚な趣の久美子からは想像出来ないもの…

頭からその香りを必死で追い出した…
< 25 / 169 >

この作品をシェア

pagetop