凶漢−デスペラード
暫く様子を見ていると、田代は店の中で引っ掛けたのか、女を二人両腕に抱えて金田組の男と別れた。

安物の葉っぱかエスでたらし込んで今夜のお楽しみに向かうつもりなのだろう。

竜治は田代の後を追った。

歩いて数分のラブホテルに田代は入った。

そのホテルはエンジェルキスでもよく利用するホテルだ。

田代達が入った後、竜治はホテルのフロントに電話を入れた。

「デリで女を頼まれたんだけど、今そちらに入った女連れのお客さんて、何号室に入りました?」

「ええと、503ですが…」

「ありがとう、3Pじゃ物足りないらしくてさ、もう一人追加してくれって電話があったんだ。」

「4Pっすか?部屋をあんまりぐちゃぐちゃにされると困るんですよね…」

「判った、女達にもそれとなく言っとくよ。」

次に電話を掛けたのは、ジュリにだった。

(どうしたの?)

「頼まれて欲しいんだ…」

そう言ってから、竜治は少し後悔した。

今から起こる事に他人を巻き込んではいけない…ましてジュリを……

(何?いいよ。何すればいいの?)

無邪気な声が電話の向こうから聞こえて来る。
後悔の念とは裏腹に、竜治はジュリに頼み事をしていた。

(じゃあ、今言ったケータイに電話すればいいのね?)

「そうだ。エスが欲しいって言うんだ。相手は、お前誰だ、どっからこの番号聞いたって必ず聞いて来る。そしたら、この前クラブで声掛けてくれたじゃないって言うんだ。」

(判った…)

「今すぐ、大至急欲しいから、何だったら、一回分だけでもって、言うんだ。」

(…うん。)

「悪いな…頼んだぞ…」

(ねえ、リュウちゃん…)

「どうした?…嫌だったら無理しなくてもいいぞ…」

(危なくないよね?)

「大丈夫、ジュリは電話するだけだから…」

(違う…アタシじゃなくてリュウちゃんが…)

「心配すんな。悪い奴をちょっと嵌めるだけだから…」

(…判った…)

「じゃあ、電話し終わったら、直ぐに俺のケータイに連絡してくれ、いいな。」

ケータイを切ると同時に、竜治の体内で血が沸騰し始めた。
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