凶漢−デスペラード
見透かされている……

そう感じたが、だからと言って自分から認めるわけには行かない。

「何故、奴がそうしたと思う?」

暖房でむせ返る位室温は上がっているはずなのに、竜治は震えるような寒気を感じた。

「田代は前から俺の盃を欲しがっていた。小さい仕事は俺の方から回してたが、俺自身は奴の事を身内にしようとは思ってなくてな…お前もム所から、いやネン少からの知り合いだったよな、まあ、どっちでもいいが、知っての通り奴はどうしようもないポン中だ。シノギの才覚はこれっぽっちも無い。ウチの組も、面向きはシャブご法度だから、おおっぴらに売を組のシノギとは出来ないから、奴みたいな者を間に入れて稼いでるってわけだ。奴は奴なりにのし上がろうとしたんだろうが、奴の事を知ってる者は、誰もまともなシノギを回す訳がねえんだ。自分の周りに居た人間が一人、又一人と組から盃を貰い、シノギもかけやすくなって、昨日迄は安物の吊しを着てた若造が、パリッとしたなりで、よう田代、てな具合に追い抜いて行く…そん中の一人に、神崎…お前も入っちまったんだ。」

グラスの中の氷がすっかり溶け、結露がコースターを覆うように水溜まりになっている。

「お前が下手を打って、それで飛ばされたら自分がその後釜に収まろうとでも奴は思ってたのかも知れねえ…尤も、本人から直に聞いた訳じゃねえから判らないが、ケツかかれた金田にしても、田代の話しに乗っかって別に損する訳じゃねえし、恐らく田代からもそれなりの物が行ったんじゃねえかな…神崎…田代はどっちにしても小者だ。刺し違える程の野郎じゃねえ。腕の一本や二本取られても致し方ない事を奴はした。ただな、とどめの刺し方が感心しねえな…俺達のような法の裏側で生きてる人間達は、例え相手が敵だろうが、サツに売っちゃあいけねえ。それが親の仇でもだ…。」

竜治の煙草が指の間で短くなっていた。
灰だけが長く落ちずにある。

重い空気を変えるかのように、澤村が突然笑い出した。

「しかし、田代の野郎も今回は何時もより長く喰らうんじゃねえか?神崎、知ってたか、奴がパクられた時、別なホテルに女を二人連れ込んでたらしいんだが、それが二人共中学生だったんだとよ。十三、四のションベン臭えガキにシャブや葉っぱやらして3Pやらかそうとしてたらしいぜ……」
< 47 / 169 >

この作品をシェア

pagetop