凶漢−デスペラード
楊小龍…ヤン・シャオロン。
中国残留孤児の子供として中国で生まれたが、十五年前に家族と共に日本に帰化。
日本名…中村龍雄。
年齢二十九歳…竜治と同じ歳だ。
龍の名を持つ二人の男…
翌日、ヤンの事を澤村に聞いてみた。
「一言でいやあ、敵にはしたくねえ男だな…ある意味お前みたいな奴だ。」
「俺、ですか?」
「お前の場合は、自分でその事に気付いてないが、奴は自分をよく判っているからコントロールしてるんだ…お前は、気付いてないからコントロールのしようが無い。ものの例えでよく言うが、抜き身の刃物がお前で、鞘に納まってるのが奴ってとこかな。渋谷に流れて来た最初の頃は、それこそ奴も抜き身の青龍刀だった。うちの連中と揉めた事だって一度や二度じゃない。ま、普通の野郎だったら、最低五回は死んでてもおかしくねえな。」
竜治は、ヤンと自分が同じだと言われた事に、納得出来たような出来ないような妙な気分になった。
危ない男…そういう匂いは、電話越しでも感じた。
自分にもそういう匂いがあると、他人は見ていたなんて思いも寄らなかった。
「言っとくが、お前だって今のままじゃ、いつ誰に刺されても不思議じゃねえんだぜ…抜き身を納める鞘を早く見つけるか、こしらえるんだな。」
澤村にそう言われたが、澤村自身がついこの前迄は竜治以上に抜き身の刀だった男だ。
「竜治、ヤンとは揉めるな。奴も馬鹿じゃねえから、めんと向かって揉めようって事はしない筈だ。現に、奴のケツ持ちは、うちの塚本のオジキだ。」
「じゃあ、何で俺をライバルだなんて…」
「本人に聞いてみな。」
それから暫くの間は、ヤンの話しが周囲から漏れる度に聞き耳を立てるようになった。
中国残留孤児の子供として中国で生まれたが、十五年前に家族と共に日本に帰化。
日本名…中村龍雄。
年齢二十九歳…竜治と同じ歳だ。
龍の名を持つ二人の男…
翌日、ヤンの事を澤村に聞いてみた。
「一言でいやあ、敵にはしたくねえ男だな…ある意味お前みたいな奴だ。」
「俺、ですか?」
「お前の場合は、自分でその事に気付いてないが、奴は自分をよく判っているからコントロールしてるんだ…お前は、気付いてないからコントロールのしようが無い。ものの例えでよく言うが、抜き身の刃物がお前で、鞘に納まってるのが奴ってとこかな。渋谷に流れて来た最初の頃は、それこそ奴も抜き身の青龍刀だった。うちの連中と揉めた事だって一度や二度じゃない。ま、普通の野郎だったら、最低五回は死んでてもおかしくねえな。」
竜治は、ヤンと自分が同じだと言われた事に、納得出来たような出来ないような妙な気分になった。
危ない男…そういう匂いは、電話越しでも感じた。
自分にもそういう匂いがあると、他人は見ていたなんて思いも寄らなかった。
「言っとくが、お前だって今のままじゃ、いつ誰に刺されても不思議じゃねえんだぜ…抜き身を納める鞘を早く見つけるか、こしらえるんだな。」
澤村にそう言われたが、澤村自身がついこの前迄は竜治以上に抜き身の刀だった男だ。
「竜治、ヤンとは揉めるな。奴も馬鹿じゃねえから、めんと向かって揉めようって事はしない筈だ。現に、奴のケツ持ちは、うちの塚本のオジキだ。」
「じゃあ、何で俺をライバルだなんて…」
「本人に聞いてみな。」
それから暫くの間は、ヤンの話しが周囲から漏れる度に聞き耳を立てるようになった。