凶漢−デスペラード

8…カジノロワイヤル

澤村と約束した期日の一週間は、あっという間に過ぎた。
竜治は時間がもっと欲しいと思ったが、取り敢えず出来る限りの準備と下調べはした。

年も明け、街はまだ何処となくのんびりと正月気分の中、竜治と澤村は、例の物件の前で立ち話をしていた。

「で、お前の言うカジノだが、その方法なら御用にはならねえって訳だな?」

「100%とは言いません。ですが、やり方はパチンコ屋と一緒ですから、法的には同じです。店では一切換金や現金のやり取りをせず、完全にアミューズメントのスタイルにします。それに、景品もパチンコ屋以上に充実させる予定です。ゲーセン感覚プラス、本格的カジノ…」

「まあ、都知事ですらお台場に公営のカジノをおったてようかなんて考えてるご時世だ。アイディア的には面白いが…」

「以前、カジノバーが流行した時は、余りにも裏の部分を派手にやり過ぎたんだと思います。サツに幾ら手を回しても、奴らの首が飛んじまう位に派手にやったんじゃ、元も子もありません。」

「…何時からオープンさせるつもりだ?」

「内装屋等の当たりはついてますから、一ヶ月もあれば…」

「…一億とか言ってたよな…」

「…はい。」

「十万の金を詰められなくて、命殺られるご時世だ。一億なんて銭、ぱあにしちまったら…」

「東京湾に百回は沈められますね…」

竜治からこんな冗談が返って来るとは思わず、澤村は少々驚いた。

化け始めやがったかな……

「なんなら青木ヵ原の樹海コースもあるぞ。」

「多分、両方共他の人間に用意して貰えれば…自分はそのツアーには参加しなくても済むと思いますが…」

「珍しく自信たっぷりだな…一週間前の自信無さ気な神崎は別人だったのか?」

無言で笑う竜治を見ながら、澤村は自分が思ってる以上に、こいつは上玉かも知れないと思った。

三が日が明けると、早速内装業者が入り、工事が始まった。

と同時に竜治は新しくオープンさせるカジノの宣伝と、警察関係の根回しに大忙しとなった。

従来のカジノバーよりも、より本場のカジノらしく…

ディーラーは全て外人の女にした。
それも、オープニングスタッフは全員ラスベガスから呼んだ。

店名は、
『カジノ・ロワイヤル』
とした。
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