凶漢−デスペラード
澤村の組事務所は、カジノ・ロワイヤルから数十メートルと離れていないマンション内にある。
滅多に事務所に顔を出す事の無い竜治だが、この日は、何処か晴れがましい気分で事務所のインターホンを押した。
澤村の若い衆がドアを開け、竜治に頭を下げた。
一年前、刑務所から出て来たばかりの日、竜治はこの事務所で澤村に拾われた。
あの時の血の味は忘れてしまったが、蔑むような目で、二十歳そこそこの若造に見下ろされた屈辱感だけは、今でもしっかりと残っている。
今は、その時見下していた連中が、自分に頭を下げている。
「急にどうした、なんかあったか?」
一億の金を持って来ると、事前には言っていなかった。
「これをお返しに…」
大理石のテーブルの上に、竜治は紙袋を置いた。
澤村が中身を見て、ちょっと驚いたような表情をし、ヒュウと口笛を吹いた。
「どっか銀行でもやっつけて来たか?」
ニヤリとしながら冗談を言う澤村に、
「まっとうな金です…きっちり一億ありますが、一応確認して下さい。」
「一億て…先月先々月と、カジノからは俺んとこに一千万ずつ届いてるぜ。」
「あれは澤村さんの取り分ですから。」
「ははは、お前、奮発し過ぎじゃねえのか?」
「大丈夫です。来月からはもう少し増やせる筈です。」
「判った。利息はサービスしてやるよ。」
二人のやり取りを見ていた若い衆は、気を呑まれたのか、目を丸くして突っ立っていた。
「おい、何ボケッとしてんだ、茶も出せねえのか!」
澤村が若い衆にそう言うと、慌ててキッチンへ行き、用意した。
「お前ら、いいかよく見とけよ、人間死ぬ迄の間、そうそうチャンスなんてやって来るもんじゃねえ、自分から掴みに行ってもなかなか掴めねえご時世だ、それをこの神崎はたった一度のチャンスをものにし、更にビックなボーナスチャンスをものにしたんだ。少しはお前らも頭使って気張ってみろよ。」
「自分は何もしてません。全部、澤村さんがチャンスをくれ、任せてくれたから出来ただけの事です。」
「…だな…しかし、お前に商売の才能があるとはな…」
上機嫌の澤村は、紙袋の中の一億から五百万ばかりを取り出し、竜治の前に置いた。
滅多に事務所に顔を出す事の無い竜治だが、この日は、何処か晴れがましい気分で事務所のインターホンを押した。
澤村の若い衆がドアを開け、竜治に頭を下げた。
一年前、刑務所から出て来たばかりの日、竜治はこの事務所で澤村に拾われた。
あの時の血の味は忘れてしまったが、蔑むような目で、二十歳そこそこの若造に見下ろされた屈辱感だけは、今でもしっかりと残っている。
今は、その時見下していた連中が、自分に頭を下げている。
「急にどうした、なんかあったか?」
一億の金を持って来ると、事前には言っていなかった。
「これをお返しに…」
大理石のテーブルの上に、竜治は紙袋を置いた。
澤村が中身を見て、ちょっと驚いたような表情をし、ヒュウと口笛を吹いた。
「どっか銀行でもやっつけて来たか?」
ニヤリとしながら冗談を言う澤村に、
「まっとうな金です…きっちり一億ありますが、一応確認して下さい。」
「一億て…先月先々月と、カジノからは俺んとこに一千万ずつ届いてるぜ。」
「あれは澤村さんの取り分ですから。」
「ははは、お前、奮発し過ぎじゃねえのか?」
「大丈夫です。来月からはもう少し増やせる筈です。」
「判った。利息はサービスしてやるよ。」
二人のやり取りを見ていた若い衆は、気を呑まれたのか、目を丸くして突っ立っていた。
「おい、何ボケッとしてんだ、茶も出せねえのか!」
澤村が若い衆にそう言うと、慌ててキッチンへ行き、用意した。
「お前ら、いいかよく見とけよ、人間死ぬ迄の間、そうそうチャンスなんてやって来るもんじゃねえ、自分から掴みに行ってもなかなか掴めねえご時世だ、それをこの神崎はたった一度のチャンスをものにし、更にビックなボーナスチャンスをものにしたんだ。少しはお前らも頭使って気張ってみろよ。」
「自分は何もしてません。全部、澤村さんがチャンスをくれ、任せてくれたから出来ただけの事です。」
「…だな…しかし、お前に商売の才能があるとはな…」
上機嫌の澤村は、紙袋の中の一億から五百万ばかりを取り出し、竜治の前に置いた。