凶漢−デスペラード
一昔前の裏カジノやポーカーゲーム屋でも、一晩で動く金というのは、せいぜい百万から数百万がいいとこだ。
店の勝ち負けにしてもそんなものだから、一人の客が馬鹿勝ちしても、大体数百万迄の話しだ。
それが、大野の話しだとヤンに一千万近く負けてるという。

竜治の店は、低料金で合法的に遊べるシステムになっているし、ディーラーにカード操作は一切させていない。
しかも、ヤンが勝ち続けているのは、ポーカーである。
ゲームに七人、客が参加すれば、店側は勝負には加わらない。
客同士の勝負になり、ディーラーは単なるゲーム進行役になるだけだ。
仮にディーラーが勝負に加わる事になったとしても、最終掛け金の10%は、店側に落ちる。
チップの張り具合が少ないと、勝った客からの収入も減る。
だから、場合によっては、ディーラーが自分の手役がどんなに弱くても、わざと掛け金をレイズアップする事がある。
最終的には、店が儲かる仕組みになっている筈なのだ。
これが競馬の方で抜かれたとかならまだ判る。
カードゲームは、基本的にどのゲームもディーラーが有利なゲームになっている。

店をオープンする事になってから、竜治はラスベガスから呼んだ外人ディーラーに、カジノで扱う全てのカードゲームの手ほどきを受けた。
たまに、自分も客側に回り、ポーカーやブラックジャックをする事があるが、どんなにツイていたとしても、そんなにチップを山状態には出来ないものだと知っている

カジノ・ロワイヤルでは、千円からのチップ購入になっているが、渡すチップは、ゲームによって違っている。

ポーカーは千円で千ドル分のチップを渡す。
掛け金のスタートは、10ドルからで、一勝負で賭けられるチップの総額は、客がかなりレイズアップしたとしても、数万ドルがいいとこだ。
換金で想定すれば、数万円位のものだ。
一勝負で時間が長く掛かっても、10分から15分だ。

ヤンは何時間、勝負をしてたんだ?

竜治は店に急いだ。
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