凶漢−デスペラード
10…トラップ
竜治の負け分は、既に30万ドル…3600万円迄になっている。
プラス、竜治が来る前のマイナスを含めれば、5000万近い金額の負けである。
どう逆立ちしてもヤンに支払える額では無い。
ヤンに次のゲームで止めると言われたら、正直、竜治はアウトだ。
竜治自身、心の内では焦っていた。
罠の種は蒔いた。
だが、実行するだけの手が入らない。
実際、勝ってた勝負迄捨てて、最後のワンゲームに賭けようとしてるのだから、ツキもヤンに味方をする。
竜治はトイレに行くふりをして、大野を呼んだ。
「いいか、次のゲームが終わったらディーラーチェンジするんだ。」
「えっ?でも、今のような大きな勝負をこなせる奴はもう残ってませんが…」
「構わない。恐らくもう二、三ゲームで勝負は終わると思うから…」
「はあ…」
「で、新しいディーラーにはこう伝えて置いてくれ。どんなに自分の手がバラバラで弱いカードでも、絶対に途中で下りるな、必ずラスト迄勝負し続けろ。寧ろ、途中でレイズアップするんだと言って置いてくれ。いいな。」
「判りました、しかし…」
「そう伝えればいいんだ。後は心配するな。」
竜治がトイレから戻り、ワンゲーム終わった所で、ディーラーがチェンジされた。
「どんな作戦を練っても、既に勝負は見えてると思うのですが?」
「日本人は昔から負け方にこだわりを持つ人種でしてね。負けるにしても美学があるものですから。」
「カミカゼ…ですか?ポーカーのような知的なゲームにはそんな精神論は似合いませんが…」
「…日本人にはもう一つ勝負事に対してのこだわりがありましてね…」
「ほう、どんなこだわりですか?」
「余力があるうちは勝負を諦めない…降伏を選ぶ位なら死を選ぶ…私の身体にも純然たる日本人の血が流れていますから。」
「それなら私の身体にだって貴方と同じ日本人としての血が流れていますよ。まあ、どうあがいても勝負は既に決してると思いますけどね。」
「そちらがどう思おうと構いませんが、最後の最後迄付き合って頂きますよ。」
竜治の挑発的とも思える言葉に、ヤンはそれ迄とは違う、微妙な変化をその冷たい表情に表した。
プラス、竜治が来る前のマイナスを含めれば、5000万近い金額の負けである。
どう逆立ちしてもヤンに支払える額では無い。
ヤンに次のゲームで止めると言われたら、正直、竜治はアウトだ。
竜治自身、心の内では焦っていた。
罠の種は蒔いた。
だが、実行するだけの手が入らない。
実際、勝ってた勝負迄捨てて、最後のワンゲームに賭けようとしてるのだから、ツキもヤンに味方をする。
竜治はトイレに行くふりをして、大野を呼んだ。
「いいか、次のゲームが終わったらディーラーチェンジするんだ。」
「えっ?でも、今のような大きな勝負をこなせる奴はもう残ってませんが…」
「構わない。恐らくもう二、三ゲームで勝負は終わると思うから…」
「はあ…」
「で、新しいディーラーにはこう伝えて置いてくれ。どんなに自分の手がバラバラで弱いカードでも、絶対に途中で下りるな、必ずラスト迄勝負し続けろ。寧ろ、途中でレイズアップするんだと言って置いてくれ。いいな。」
「判りました、しかし…」
「そう伝えればいいんだ。後は心配するな。」
竜治がトイレから戻り、ワンゲーム終わった所で、ディーラーがチェンジされた。
「どんな作戦を練っても、既に勝負は見えてると思うのですが?」
「日本人は昔から負け方にこだわりを持つ人種でしてね。負けるにしても美学があるものですから。」
「カミカゼ…ですか?ポーカーのような知的なゲームにはそんな精神論は似合いませんが…」
「…日本人にはもう一つ勝負事に対してのこだわりがありましてね…」
「ほう、どんなこだわりですか?」
「余力があるうちは勝負を諦めない…降伏を選ぶ位なら死を選ぶ…私の身体にも純然たる日本人の血が流れていますから。」
「それなら私の身体にだって貴方と同じ日本人としての血が流れていますよ。まあ、どうあがいても勝負は既に決してると思いますけどね。」
「そちらがどう思おうと構いませんが、最後の最後迄付き合って頂きますよ。」
竜治の挑発的とも思える言葉に、ヤンはそれ迄とは違う、微妙な変化をその冷たい表情に表した。