凶漢−デスペラード
三枚目のシュート。

竜治…ハートの3。
女…クラブのJ。

ヤン…スペードの9。
ディーラー…ダイヤの5。

男二人は既にダウンしている。

卓上のチップは3万ドル程。

打ち出しは女…

無造作に1万ドルを投げた。

ヤンは1万ドルに上乗せして3万ドルを卓の中央にゆっくりと出した。

ディーラー…まだ二十歳そこそこにしかならない留学生…。

他のディーラー達の殆どが、ラスベガスで経験があるのだが、彼女は未経験で竜治の店に来た。

単にアミューズメントのカジノだから、そう難しい事はないと思ってアルバイトで来ていたのが、思いも寄らない大勝負に関わってしまった。

終始、困惑と畏れの入り混じった表情で青ざめている。

ディーラーのチップボックスから、コールする為の3万ドルを出そうかどうか迷っている。

竜治が、目で合図を送る。

彼女は意を決してチップを卓上に積む。

竜治もコールする。

四枚目……

竜治…ダイヤの3
フラッシュにもならない。

女…スペードの8
ヤン…ハートの4
ディーラー…クラブのK

表上は以前、7のペアを引いている、隣の女がリードしている。

表四枚、裏二枚、この時点で相手の手役をある程度予測した上で、ラストカードを引きに行くかどうかを決めなければならない。

相手の途中迄に於けるチップの賭け方も考慮に入れた上での事だが……

隣の女のチップの賭け方は、単純に賭け金の吊り上げだけを目的としたものだと判る賭け方だ。

判らないのはヤンだ。

女が打ち出した賭け金に、それ迄必ずレイズアップして来たのに、今回はそのままコールして来た。

手が思惑通りに延びていないのか?

竜治は、先にダウンした二人の表カードを思い返していた。

場には、意外な程に絵札が出ていない。

10以下のローカードが多い。

こういう時は、手の内に絵札のペアが隠されている事が多々ある。

いずれにしても、女とヤンは、表カードで既にワンペアを作っている。

竜治は、ロイヤルストレートフラッシュに王手を掛けているとはいえ、手役自体はブタだ。
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