凶漢−デスペラード
「何時の時代も同じ…確かに、現代の子達はあっけらかんとしてて、一見すると何も考えて無いように見えるし、部外者から見れば全然苦しんでるようには見えなくて、寧ろ楽してお金が稼げるって思っている子が多くなって来てるのも事実…でもね、そういう子達って、身体を売ってる事の真の意味を判っていないから、かえって怖いの。ある日、突然ふと気付いて、ものすごい自己嫌悪に陥り、生きてる事そのものの意義を見失ってしまう…女ってね、幾つになっても、白雪姫やシンデレラを夢見るの…いつか、自分にもあんな王子様が現れるものと信じてるの…信じるというより、思い込みたいのよね…王子様が自分を迎えに来て、この苦界から救ってくれるって…多分、貴方の彼女も竜治さんの事を白馬に乗った王子様と思ってるかもよ……ごめんなさい、何だか変な話しになっちゃって。せっかく竜治さんと初デートなのに。」

「これって、デートなんですか?」

「そうねえ、デートと思えばデートにもなるし、そうじゃないって思ってしまえば違ってしまうかも。あくまでも本人次第という所ね……」

「じゃあ、初デートという事で、あらためて乾杯しませんか?」

「OK…て、言おうかなと思ったけれど、彼女に悪いから、NO…でも、今夜のワインがすごく美味しいから、友人同士がグラスを傾け合うという事での乾杯はしましょ。」

久美子が思いの外、酔っているように見えた。
たわいもない言葉遊びのような二人の会話も、初めの頃のぎこち無さは消え、時折り自然な笑い声も出るようになっていた。

久美子が酔った分、竜治は彼女に対しての距離が近くなった気持ちになり、何だか何年も前から付き合ってる者同士のような雰囲気になった。

何時しか竜治は、自分の事を少しずつ話し始めていた。

久美子は嫌がる風でも無く、最高の聞き役として、隣に居てくれた。

「つまらない話しをしちゃいましたね…」

「ううん、そんな事ないわよ。私の聞きたいっていう気持ちが、竜治さんに伝わったから、こうして話す気分になってくれたんじゃない?」

「そうですね…久美子さんて、ただ黙ってるだけなのに、何だか、何でも話せる雰囲気がありますよね。」

「そうかな…話しは変わるけど竜治さんはこの先どうするつもりなの?」

竜治は久美子の問い掛けに、暫く考えた。
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