凶漢−デスペラード
排泄目的だけのセックスの対象にされてしまった………

その相手が竜治だった事にショックを受けた。

これが、知り合ったばかりの時であったり、行きずりの名も知らぬ男との情事や、金を得る為の行為ならそんな気持ちにはならなかった。

竜治だけは、初めての夜を過ごした時から、今の今迄、他のどの男とも違っていた。

欲望のみのセックスを求められた事は無かった。
だから竜治はジュリにとって特別な存在になり始めていたのだ。

抱かれていた時、不意に十二歳の時を思い出してしまった。

男という生き物が、突然ああいった暴力的なセックスをしてくるものだという事を、多少はジュリも判ってはいたが、それは理解したという意味では無かった。

つい一時間前迄は……。

ジュリは、久し振りにあの嫌な音を聞いた。

自分にしか判らない不快な音……

心が壊れる音だった。



指定された時間の5分前に宮下公園の向かいにあるルノワールに着いた。

既に河田は来ていた。

竜治を見ると、直ぐに出ようと言い、歩道橋を渡って、宮下公園の下にある駐車場に向かった。

シルバーグレーのベンツに乗り込むと、河田は何も言わず、明治通りを右折し、青山通りを神奈川方面に向かった。

互いに無言のままでいた。途中、何度か脇道に入り、わざとそうしてるかのように遠回りしていた。

河田は終始後方を気にしていた。

何処と無く、その行動が滑稽に思えた。

大袈裟な奴だなとその時は思ったが、目的地に着いた時、決してそれが大袈裟な事では無く、本当にそうする必要があったんだと理解した。

土手沿いを暫く走っていたから、多分多摩川沿いの何処かだろうと竜治は思った。

土手沿いにあった白いマンションを、一、二度行ったり来たりし、辺りの様子をうかがった。

そのマンションから五十メートル程離れた路上にベンツを駐車した。

マンションの入口はオートロックになっていた。

カードで開けるタイプのオートロックで、入口を開けた後、河田はそのカードを竜治に渡した。

河田はエレベーターを使わず、階段で二階迄上がった。
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