凶漢−デスペラード

3…ジュリ

ジュリのケータイに掛けてみたが、つながらなかった。

エンジェルキスに電話をすると、

(ジュリちゃんが又仕事してくれてるんです。)

と上原が言った。

「そうか……」

(一応、竜治さん知ってらっしゃるのかなと思って、それで電話を入れさせて貰ったんですが、ずっとつながらなくて…)

「ああ…ちょっと取り込んでたんでな…」

電話を切った竜治は、急に酒に溺れたくなった。

思い切り酒に溺れるには、それに相応しい店の方がいい。

出来れば知った顔と出くわさない店……

ハチ公前を通り過ぎ、東急プラザの裏通りに出た。

ぶらぶらしていると、小雨がぱらつく中、傘もささずにキャバクラの呼び込みがよって来た。

知らない顔だ。

先に竜治から声を掛けた。

「まだ飲めるか?」

「ええ大丈夫ですよ。うちは、一応五時迄とはなってますけど、お客さん次第では一時間位閉店時間を遅らせますよ。」

「案内しろ…」

「ありがとうございます!」

労せずして客を捕まえられたせいか、若い客引きは嬉々として店に電話を入れた。

その店は、すぐ目の前のビルにあった。

エレベーターで五階迄案内され、扉が開くと、もうそこが店のフロントになっていた。

黒服が何人かいらっしゃいませと声を掛けて来た。

店内は、思った程広くなく、客は二人連れのサラリーマンが一組だけだった。

隅のボックスシートに座らされ、黒服が料金システムを説明し始めた。

対面のボックスに、女が十人程居た。

二人連れの席に四人居たから、全部で十四人程……

馬鹿騒ぎするには丁度いい位の店かも知れない。

「少し騒がしても構わないか?」

「どうぞ、見ての通り暇で寂しい雰囲気ですから、どんどん盛り上げて下さい。」

竜治は、上着のポケットから100万の束を出し、

「そっくり預けるから、空いてる女を全部ここに呼んでくれ。」

と言った。

黒服は、恐らく本人にとっての最高級の笑顔を見せた。

暇を持て余し、気の抜けた表情をしていた女達が一斉に顔色を変えて竜治の席にやって来た。

黒服から飛び切りの上客だぞと言われたのだろう、皆、競うかのように竜治に媚びた。
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