凶漢−デスペラード
バーテンが久美子に飲み物を聞いた。
「そうねェ…今夜はバーボンてムードかな…」
「トニックウォーターで割りますか?」
「ええ、私はそれでいいわ。竜治さんは、ロックの方がいい?」
「任せます…」
「じゃあ、あれを出して。」
「フィッツジェラルド…」
バーテンはにこりと笑いながら二人の前にボトルを置き、それぞれのグラスに液体を注いだ。
バーテンは、その場を久美子に任せるようにして、奥へと離れて行った。
「乾杯…」
バーボン独特の香が鼻の奥を駆け抜けた。
悪くない…
久美子がバーテンに、もう今夜は閉めましょうと言い、片付けが終わったら先に帰って下さいと言った。
「こういう店だなんて思ってもいなくて…」
「若くて綺麗な女の子が沢山居るお店を想像してた?」
「いえ…まあ、はい……」
久美子は笑った。
「こういう店で飲んだ事が無いから、すごく緊張しますね。」
「そんなふうには見えないけど。」
「見栄、張ってますから…」
そう言いながら、一気に飲み干した竜治を見て、
「まだ夜は長いんだから、そんなに慌てちゃ駄目…」
まるで、姉が弟を諭すような言い方だ。
「さっき、歌ってた曲…」
「え?」
「良かったです…すごく……」
「ありがとう…最後の曲ね、昔、好きだった人が何時も聴いていた曲なの…」
「…その人の事、今でも好きなんですね……」
「どうしてそう思ったの?」
「別れた後も、こうしてその人が好きだった曲を歌ってる…だから、そうなのかなって…勝手な想像でしたね…」
久美子は、憂いを含んだ笑顔を見せた。
「意外と、少しは当たっているかも……」
「…なんて曲なんですか?」
「『デスペラード』…ならず者…イーグルスというアメリカのグループの曲…」
「その前の曲も、聴いていてジーンと来ちゃったんですけど、あれも、以前の彼氏が…ですか?」
「ううん…あれは、エディット・ピアフの『愛の讃歌』っていう曲。かなり昔の曲なんだけど、私が一番好きな曲なの。」
愛の讃歌……
竜治は、心の中で何回か呟いた。
「竜治さんは、音楽とか聴くの?」
「そうねェ…今夜はバーボンてムードかな…」
「トニックウォーターで割りますか?」
「ええ、私はそれでいいわ。竜治さんは、ロックの方がいい?」
「任せます…」
「じゃあ、あれを出して。」
「フィッツジェラルド…」
バーテンはにこりと笑いながら二人の前にボトルを置き、それぞれのグラスに液体を注いだ。
バーテンは、その場を久美子に任せるようにして、奥へと離れて行った。
「乾杯…」
バーボン独特の香が鼻の奥を駆け抜けた。
悪くない…
久美子がバーテンに、もう今夜は閉めましょうと言い、片付けが終わったら先に帰って下さいと言った。
「こういう店だなんて思ってもいなくて…」
「若くて綺麗な女の子が沢山居るお店を想像してた?」
「いえ…まあ、はい……」
久美子は笑った。
「こういう店で飲んだ事が無いから、すごく緊張しますね。」
「そんなふうには見えないけど。」
「見栄、張ってますから…」
そう言いながら、一気に飲み干した竜治を見て、
「まだ夜は長いんだから、そんなに慌てちゃ駄目…」
まるで、姉が弟を諭すような言い方だ。
「さっき、歌ってた曲…」
「え?」
「良かったです…すごく……」
「ありがとう…最後の曲ね、昔、好きだった人が何時も聴いていた曲なの…」
「…その人の事、今でも好きなんですね……」
「どうしてそう思ったの?」
「別れた後も、こうしてその人が好きだった曲を歌ってる…だから、そうなのかなって…勝手な想像でしたね…」
久美子は、憂いを含んだ笑顔を見せた。
「意外と、少しは当たっているかも……」
「…なんて曲なんですか?」
「『デスペラード』…ならず者…イーグルスというアメリカのグループの曲…」
「その前の曲も、聴いていてジーンと来ちゃったんですけど、あれも、以前の彼氏が…ですか?」
「ううん…あれは、エディット・ピアフの『愛の讃歌』っていう曲。かなり昔の曲なんだけど、私が一番好きな曲なの。」
愛の讃歌……
竜治は、心の中で何回か呟いた。
「竜治さんは、音楽とか聴くの?」