incarnate
ごめんね、夜。
ごめん。
あたしは倒れた夜に近づいていく。
けれどもう、それは人の姿をしていない。
あたしを幸せにするための、優しい嘘。
キミは───‥
懐かしい記憶が脳裏を過ぎる。
見覚えのあるハンカチ。
そこに横たわるのは、確かに夜であるはずなのに。
姿は何年前かに出会った、足に傷を負った狐だった。
夜は、キミは、あたしに幸せを運んでくれたんだね。
本来の姿は、仮の姿である人の時より、いっそう雪が似合う恋人だった。
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