小さな恋【完結】
放課後。
りっちゃんは慌てて教室を飛び出していった。
ずっと見たかった映画の上映が今日までらしい。
ケンちゃんと下駄箱で待ち合わせをして、映画館までダッシュする二人の姿を想像すると少しだけ笑える。
帰宅部のあたしが教室に残っている意味はない。
一人でのんびりと下駄箱に向かい、上履きからまだ新しいローファーに履き替える。
「真依子ちゃん」
校門を目指して歩き出すと、突然背後から名前を呼ばれた。
低いその声が誰であるかすぐに分かった。
あたしを真依子ちゃんと呼ぶ男の人は、ケンちゃんと……一哉先輩だけ。