小さな恋【完結】
……頭と体がバラバラになったみたい。


うまくバランスがとれない。


「……ふぅん。まぁ、いいや。引き止めてごめんね」


「ううん。じゃあ、また」


繭ちゃんはペコリと先輩に頭を下げると、駆けだした。



「じゃあ、帰ろうか?」


「あ……すみません。あたし……ちょっと用事があったの思い出しちゃって……」


先輩と一緒に帰れるなんて夢のよう。


先輩の彼女になりたくて。


先輩をもっと知りたくて。


先輩の為に、一生懸命勉強して、この高校に入学したのに。



それなのに、あたしはいとも簡単にその夢を手放した。


自分でもよく分からない感情が体中に広がっていたから。


「あのさ」


すると、先輩はそう言いかけてその場にピタリと立ち止まった。

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