小さな恋【完結】
「よかった。人違いだったら気まずいなって、声かけてから気付いたよ」
苦笑しながら髪を指先でいじる一哉先輩にあたしは頬を赤らめた。
やっぱり先輩を追いかけて必死に勉強したかいがあった。
制服を嫌味ではない程度に着崩して、シルバーのピアスをつけている一哉先輩。
全身から男の色気が漂っていて、傍にいるとクラクラしてしまいそうだった。
「先輩は、あたしのこと覚えててくれたんですか……?」
「うん。前に会った時は中学生って感じだったのに、なんかずいぶん大人っぽくなったね?」
「……いえいえ!そんなことないですよ!!」
大人っぽくなったという先輩の言葉を良い意味にとらえたあたし。
照れ臭くなって、先輩から目を反らす。