小さな恋【完結】
「……?」


柔らかい風が前髪を揺らす。


その時、ようやく風が吹いていたことに気付いた。


あたしはどうしてこんなにも臆病になっているんだろう。


「どうして」とか「何で」とか。


最近、そんなことばっかり考えてる。


自分が自分じゃないみたい。


あたしはハァと息を吐き出すと、力任せに携帯のボタンを押した。


≪プルルルル~~~♪≫


耳に届く呼び出し音。


そっと携帯を耳に当てる。


≪♪~~♪……――!≫


3コール目。



『……もしもし』


呼び出し音は、低くかすれる声に変わった。

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