小さな恋【完結】
「俺が誰かと付き合うと、お前は泣くのか?」


大知の済んだ瞳があたしを捕えて離さない。


あたしは咄嗟に大知から目を反らした。


「なぁ、ちゃんとこっち見ろよ。俺はお前が……――」


お前が……なに?


大知が再びあたしの腕を掴んだ時。



「大知く~ん!真依子ちゃん~!!」


そんな声と同時に、バタバタと上履きを鳴らして繭ちゃんが走ってきた。


繭ちゃんがあたし達の元へ辿り着くまでの間、あたしと大知は黙って見つめあっていた。


どちらとも視線を外さない。


ほんの数十秒。ううん、数秒がとても長い時間に感じられた。


あたしと大知の周りだけ時間が止まったみたい。


掴んでいる腕に大知が力を込める。


あたしは大知の熱を感じながら、込み上げる感情を必死で押さえこんだ。
< 136 / 460 >

この作品をシェア

pagetop