小さな恋【完結】


繭ちゃんは愛嬌のある笑みを浮かべながら大知の腕にギュッと掴まる。


その瞬間、大知はあたしの腕から素早く手を離した。


大知の熱はすぐにあたしから離れていく。



「別に。つーか、何の用?」


大知は露骨に繭ちゃんの腕を振り払うと、眉間に皺を寄せた。


「ちょっと~。大知君、照れてるの~?」


再び大知の腕に自分の腕を絡ませる繭ちゃん。


あたしはブルブルと震え出す手を背中に隠した。


「あたし、お邪魔虫だし先に教室戻るね?」


何とか口の端を持ち上げて笑顔を作る。


胸に熱いものが込み上げて来て、今にもそれが溢れだしてしまいそうだった。
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