小さな恋【完結】
「俺達さ、付き合ってたのにお互い違う相手を想ってたんだな?」


「あたしは元カレ、一哉は元カノ……。不思議だね」


「あぁ。でもさ、俺は真依子と付き合ってちゃんと自分の気持ちに気付けたよ」



あたしも……。


あたしも一哉と付き合って、自分の気持ちにようやく気がついた。



「失ってから気付くものって……あるんだな」


「……うん」


あたしは、大知を失ってようやく自分の気持ちに気付いた。


手を伸ばせば、すぐそこにあったのに。


すぐに手を握り返してくれる大知がいたのに。


だけど、大知は今、繭ちゃんの手を握ってる……。



「俺、真依子と付き合えてよかった。本当に、ありがとな……?」


「あたしも、一哉と付き合えてよかったよ」


あたしはニコッと一哉に微笑みかけると、勢いよく立ちあがった。
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