小さな恋【完結】
「……真依子の好きな奴って誰?」


真剣な表情の大知から顔を反らして、グッと唇を噛む。


本当のことを言えたらいいのに。


「好きだよ」って。


「大好きだよ」って。


だけど、あたしにそんなことを言う権利なんてない。


すると、突然グイッと腕を引っ張られた。



「……だ、いち……?」


そのままあたしの体は大知の胸にスッポリと収まった。


薄いYシャツ越しに感じる大知の熱。


香水の甘い香り。


トクントクンっと一定のリズムを刻む心臓の音。


その全てが、あたしの体を熱くする。

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