小さな恋【完結】
「繭ちゃん……?」


両手を机についたまま、繭ちゃんは顔を上げようとはしない。


その肩が小刻みに震えている。


「あたし、あの時……――」


「……え?」


何かを言い掛けていた繭ちゃん。その近くでクラスメイトの女子が繭ちゃんを指差した。


「みんな心配してあげてんのに、何あの態度……最悪じゃない?」


一人、また一人と繭ちゃんの周りでそんな不満の声が漏れる。


すると、繭ちゃんはキッとその子たちを睨み付けると、机の横のカバンを力任せに掴んだ。



「……――どいて!!」


一瞬だけ見えた繭ちゃんの顔。その目には涙が浮かんでいて。


繭ちゃんはそのまま教室を飛び出していった。

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