小さな恋【完結】
「また明日、学校でね」
「はい!今日はありがとうございました!!」
家の前で頭を下げると、先輩は片手を上げて歩き出す。
大きな背中は徐々に遠ざかり小さくなっていく。
その時、ふとある記憶が蘇った。
『……――真依子、またな!!』
片手を上げて去っていく先輩の後ろ姿が彼とダブって見える。
先輩は一度も振り返ることなく、そのまま曲がり角を曲がった。
やっぱり、あれは彼じゃない。
当たり前のことを、ようやく頭が理解する。
彼はいつも何度も何度も振り返って、その度にあたしに手を振ってくれたから。
『真依子、また明日学校でな!!』
両手をブンブンと振って、眩しいほどの笑顔でそう叫んだ彼。
あたしはその記憶を振り切る様にグッと唇を噛み締めて、家の玄関に手をかけた。