小さな恋【完結】
「真依子ちゃんは忘れてると思うけど、あたし、この高校に入学する前、真依子ちゃんに会ってたんだよ?」
「え……?嘘?ごめん。あたしバカだから、全然覚えてないや……」
「入試の日、受験票落とした女の子いなかった?」
「受験票落とした女の子……?」
ああ、言われてみれば確かにそんな子がいた。
受験票をどこかに落としたって、ひどく慌てた様子の女の子が。
「……あれ、繭ちゃんだったの?」
「そう。受験票無くして困ってた時、同中の子は誰も一緒に探してくれなくて。そんな時、真依子ちゃんが声をかけてくれたの」
繭ちゃんは目に浮かぶ涙を制服の袖で拭った。