小さな恋【完結】
「はぁぁ……眠っ……」
校長の退屈な話にあくびを噛み殺して閉じそうになる瞼(まぶた)を必死に持ち上げる。
ダメダメ。入学式で寝るなんてありえない。
もしいびきでもかいちゃったら、赤っ恥もいいとこだし。
あたしは椅子に座り直すと、周りを見渡した。
膝の上のタオルを握り締めて、今にも泣き出しそうな可愛い女の子。
入学式だというのに制服をはだけさせて不良アピールしている茶髪のイカツイ男の子。
何やらブツブツと独り言を繰り返す、ちょっぴり地味めな男の子。
うん、やっぱり人間観察は面白い。
「……あっ……――」
だけど、ある人物の姿を見つけた途端、胸がチクリっと痛んだ。