小さな恋【完結】
そして、夏休み。転入試験が行われた。
長らく足を運んでいなかった実家に顔を出して、転入先の高校を見学して。
夏休み中、その大半を大知はお父さんの実家で過ごしたらしい。
あたしはその頃、何も知らずに一哉の家にいたに違いない。
急にかかってきた電話。
別れてから、携帯のディスプレイに表示されることのなかった大知の名前。
『別に用があったわけじゃないんだけどさ。真依子の声聞きたくなった』
あの時に感じた胸のざわめきを、今でも覚えてる。
大知はどんな気持ちであたしに電話をかけてきたんだろう……。
『あー……彼氏と一緒か?忙しいとこ悪かった。じゃあな』
あたしが答えを出す前に、一方的に切った電話。
大知は何も言わなかったけど、きっと苦しんでた。
いっぱいいっぱい苦しんで、最後の最後であたしに電話をかけてきてくれたのかな……?