小さな恋【完結】
「あたし……何も知らなかった……」
大知が苦しんでいるのを、全然知らなかった。
あたしは……本当になにも……。
「ねぇ、真依子。大知も色々あって辛いと思うけど、同情で優しくしちゃだめだよ。大知と付き合う気がないなら……言いたいこと分かるよね?」
「うん……分かってるよ」
分かってる。
でも、ほんの少しだけ気持ちが揺れた。
大知を友達だと思う気持ちも変わらない。
でも、大切な友達として何かをしてあげたいと思った。
この気持ちを同情と呼ぶなら、きっとあたしはこんなことを思ってはいけない。
優しくすれば、あたしはまた大知を傷付ける。
期待を持たせてその期待を裏切れば、どうなるかなんて分かり切っているから。
知らなかったことにしよう。
あたしは、何も知らない。
……――何も聞いてない。