ネコ専務シリーズ

どっしりと胡坐をかいて座り込むネコ
専務の周りで、しばらくギャーギャー
わめいていた悪ガキどもだったが、
最後には根負けして、ガキ大将は、

「分かったよ。いいよ、お前らもいて
　いいよ」

と言った。
するとネコ専務は、

「それでいいんだ。ほら、お坊さん、
　行くぞ」

と、みんなが「あれ？」と見ている中、
弟を連れて、堂々と胸を張って原っぱを
出て行ってしまった。

自分の欲求はちゃんと主張して通しなが
らも、その欲求に固執はしない。
ネコ専務は昔から、そういうネコだった
のである。


その夜この話を聞いた、ネコ専務より
９歳年上で中学生の長兄・ネコ画伯は、

「この弟はけっこう大物だぞ」

と喜んで、その日のネコ専務の油絵を
一枚描いてやった。


それから時は流れて、その少年は、大物
も大物、史上初の、全てのネコのトップ
に立つ、世界連邦の初代大統領になった。

その豪華な大統領執務室の壁に、あまり
うまくない男の子猫が描かれた油絵が
何気なくかかっているのだが、その絵の
由来と言うのは、実はこういうことなの
であった。

　　　　　　　　　　　　　　おしまい