ネコ専務シリーズ
週末の朝10時。花好きの母のために、
ネコ専務が花屋で買ってきたバラの花束
をもって横浜の洋館に行き、玄関チャイ
ムを鳴らすと、すぐにガチャッと立派な
木製のドアが開いて、半年ぶりの母の、
笑みに輝く白い顔が現れた。

ネコ専務は母に花束を渡して邸宅に上が
りこもうとしたが、母猫はこっちこっち
と手招きして広い庭の方へ回り、5月の
陽光の下にセットされた丸テーブルと
2脚の北欧製のイスを手で示した。

テーブルの上にはチョコレートケーキや
ティーカップやポット、花には詳しく
ないネコ専務には何の花か言えないが、
どこかで見たことはありそうな春らしい
花をたっぷり盛った大型のガラス製花瓶
が置かれてある。

ネコ専務は、あなたはそっちね、と言わ
れた席にニコニコして座る。
気ままは立ったまま、さっそく紅茶を
ポットから2個のティーカップに注ぎ
始めた。


そうして、ケーキを前にして口元をほこ
ろばせたネコ専務の鼻孔は、ティーカッ
プから立ち昇るダージリンの香りを
かいだ。

             おしまい
< 256 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop