ネコ専務シリーズ
「私は、三木根公子(みきね・きみこ)
 です。新入社員です。私は、路地裏
 大学での専務さんの講演を聞いて、
 この会社を志望しました。
 
 よろしくお願いします!」


2人はそろって、深々と頭を下げた。


「ああ、そうか。講演、そんなに良かっ
 たかなあ?
 
 まあ、がんばってくれたまえよ。今の
 日本の経済情勢は、なかなか厳しい
 からね。はじめは大変だろうが、期待
 してるよ、島大河くん、三木根公子
 くん」

「はいっ!!」


悠然と去っていくネコ専務の後ろ姿を
見つめる2人の目は、さながら英雄に
会った人のように輝いていた。

背にあこがれの視線を受けて、ネコ専務
は威厳ありげにのしのしと歩み去ったが、
2人から見えないところまで来ると、
いくぶんだらしない歩き方にあり、誰の
目にも触れない自分の専務室に入ると、
急にぐで~んとなって、


「やれやれ、持ち上げてくれるのはうれ
 しいけど、たまににしてほしいね。
 疲れるから」

とつぶやいた。そしてネコ専務は、
「あ、ねむねむ」とソファーにゴロンと
横になって、午後2時までの朝の昼寝を
始めたのであった。

             おしまい
 
 
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