ネコ専務シリーズ
そのトーマス横島だが、驚いたことに、
2メートル近い巨漢のアメリカンショー
トヘアだった!

顔は渋谷の事務所の額縁に飾ってあった
顔写真で前もって見ていたのだが、実物
は写真よりもっと精悍で、引き締まった
顔つきである。

宗教の教祖というより、プロレスラーや
砲丸投げの選手のようだ。


トーマス横島は簡単な自己紹介をした後、
自分たちの教えの話をし始めたが、話の
内容としては、一般人向けなので、ネコ
専務が以前に渋谷の事務所で信者から
聞いた話とだいぶ重なっており、さほど
新味はない。

野太いがよく通る、きれいな声だったが、
だんだん退屈してきたネコ専務は、

(でもまあ、トーマス横島が見れたから
 いいか)

と思いながらも、いつ終わるのかなと、
講演者の話をちょっと聞き流しながら、
帰りのことを考え始めていた。


そのときである。トーマス横島はふと、
いったん話を切り、突然こんなことを
言い出した。

「さて、みなさん。実は本日会場に、
 素晴らしいお客様がいらっしゃって
 おります。

 会場のどこかにおいでの、×××様、
 ご面倒かと思いますが、どうぞ、
 前の方にお越しいただけますか?」

×××様、それは実に、ネコ専務の本名で
あった!
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