ネコ専務シリーズ
満月の夜、100人を越えるネコたちが
公園に集まり、ネコシンガーとバッド
ニャンコのリーダーの歌を聴き比べた。

はじめに歌ったのはバッドニャンコの方
で、選んだ歌は「ネコ踏んじゃった」で
あった。

これは意外と美声で、100人のネコは
うなずきあって、「うーん、わるくない」
と言い合った。
そして次は、ネコシンガーの番である。

月の光の下、ネコシンガーは場の中央に
進み出た。
ネコシンガーに不安はまったくなかった。
むしろ、自分の歌を100人ものネコに
聴かせることができる期待でいっぱいで
あった。

ネコシンガーは、はじめはそっと、次第
に激しく、最後は絶唱するほどになって、
歌い切った。
選んだ歌は、誰でも知っているような、
日本人ロックグループの歌だったので、
100人のネコはみんな乗りに乗って、
拍手喝采、歌いだし踊りだし、なんと、
当の敵であるバッドニャンコのリーダー
までが、一緒に歌っている始末である。
勝負は決まった。

こうして「ばくねこ」はバッドニャンコ
を傘下に収めたのだが、この日をもって、
ネコシンガーはばくねこのリーダーの座
を降り、プロの歌手を目指して、本格的
に歌の勉強を始めるようになったので
ある。


4年後、「ファントム・キャット」の
ロックシンガーとしてメジャーデビュー
を果たしたネコシンガーは、はじめは
小宮ねねの娘として注目されたのだが
、すぐに実力で認められるようになった。
こうして、ネコ専務の一族から、また
一人偉猫が出現したのであった。

(ちなみに、バンド名ファントム・キャ
 ットとは、メンバーの一人が米軍の
 戦闘機F-14トムキャットが大好きな
 ため、「トムキャットのファン」を
 もじってネーミングされたもので
 ある)

              おしまい
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