Sleeping baby ~眠り姫~
会社に着くと、社長室に消えて行く兄。
社長業と言うものはとても忙しいらしい。
まだ雑用しかやらせて貰えないアシスタント平社員のアタシには、まだまだ伺い知れない世界だ。
社長室に消えて行く直前に『ヒカル、今期のミラノの新人デザイナーの新作、オマエに似合いそうだったぞ?コレも仕事の一環だと思って着てみろ』と言い残して行った。
うん、兄ちゃん…
ハッキリ言っていいよ?
ダサいって!!
やんわりとアタシの今日の服がダサいと忠告したかったのだろう…。
だったらせめて家を出る前に言って欲しかった!
今さら遅いわ!と一人取り残された廊下で地団駄を踏むヒカル23歳。
兄と結婚してちょうど1週間。
迎えた今年の夏は、ちょっと暑さが厳しかった。
そして、オシャレにも気を抜けないという、社会人としての気構えもヒカルには厳しかった。