Sleeping baby ~眠り姫~
アタシや父さんや母さんは、絶対に兄ちゃんの前から居なくならないから。
兄ちゃんを置いてどこかへ消えてしまった親のように、アタシ達は居なくなったりしない。
子供の頃に居なくなった飼い猫のミルちゃんのように、突然消えたりしない。
例え兄妹だろうと夫婦であろうと、どんな関係性であれ、アタシは兄ちゃんを置いて離れたりしない。
自分の気持ちを裏切って無理して笑って見せたって構わない程に、アタシは兄ちゃんが大切だ。
この気持ちを何と呼ぶのか。
家族愛?
兄妹愛?
情愛?
恋愛?
夫婦愛?
どれも当て嵌まりそうでどれも当て嵌まらない。
例えて言うならば、自分よりも大切な何か。
一番守りたいもの。
恋愛よりももっと深く、もっと穏やかで、暖かい。
"愛"と呼べそうなこの思いだけは、これからもこの先もずっと変わらない、それだけは確かだと言える。
心の奥から込み上げる暖かで強いこの思いに、いつか名前が付けばいいなと思ったヒカルだった。