黒猫眠り姫〔下〕
私友達まであんまり居なかったし。
モテるわけない。
「嘘だろ。俺は知ってるぞ。
鈴は気付かないだけで周りからはかなり有名だぞ。」
尚が欠伸をする。
「私、影が薄いから目立たないし。」
「美人だって有名な話で喋ってみたいって
そこらへんにいる男子生徒は殆ど言ってたし。」
「尚の聞き間違いじゃないの?」
「俺だって初めて喋った時は緊張したぞ。」
「私で?」
「そりゃ、聞いてた通り美人だったわけだし。」
「美人ってほど綺麗なわけではないけど。」
「鈴、可笑しいって。」
「私可笑しくないよ。」
「謙遜し過ぎだろ。」
「あんまり慣れてないから。」
美人とか言われ慣れてない。
私は普通だと思ってたし。
男の子は少し苦手だった。
人間っていう人種があまり上手く付き合って
行ける自信がなかった。
私だって人間で変わりなんて殆どないのに、
怖かったからだろう。
「でも、緊張して損した。」
「えっ?」
「噂ってのはよくないな。
鈴って無口だって聞いてた割に話したら
面白かったし。」
「期待を裏切った?」
「違うな、期待以上の子だと思った。
だから、喋って良かった。
俺って結構人の見る目はいい方なんだ。」
「私は尚が話しかけて来た時驚いたよ。」
私に話しかける人なんて居たんだって
驚いて上手く喋れた記憶がない。
「勿体無いだろ。」
「ん?」
「鈴、いい奴なのに。」
それが世間ってものなんだよ。