黒猫眠り姫〔下〕

会えることを望んで会えないことに絶望を覚えた。

彼を思うとこれが一番の方法だと思えた。

あたしがもう2度と彼から何もかも奪わないように。

彼が2度と不幸になりませんようにと願うあたし

のただの強がり。

会いたいのも我儘も言わないから、だから

彼が幸せになれますようにっていつも思ってる。

「湊、どれが一番の正解なんだろうね?」

数学が好きなのは答えが一つしかないから。

国語が嫌いなのは何個も答えがあるから。

答えなんて一つでいいのに。

神様は意地悪するんだね。

どうして、答えは一つじゃないの?

「鈴が思ったことだと思う。

間違えを恐れないで、鈴ならきっと

出来ることだから。」

怖いって言ったら?

「・・・湊みたいに強くない。」

怯える過去からはどうしても抜け出せない。

「俺だって強くはない。

でもね、鈴には笑って欲しいんだ。

今のままがずっと鈴を影に落とすんだったら

俺は鈴の背中を押したいと思ってる。」

大好きな大切な存在の君がそう言うから

思わず涙が頬をつたった。

「俺も同じだぞ。

鈴の本当に笑った顔見てぇーぞ。」

桐っていう大事な存在があたしの

背中を押す。

「気持ちは変わらないよ。

鈴が大切なのは何も変わらない。

どうしようが変わることはないんだ。

俺の鈴への思いは揺ぎ無く変わらないから、

だから、向き合って欲しいんだ。」

逃げることが本当の優しさじゃない。

彼を避けることが正解じゃない。

だとしたら、もういいのかもしれない。

意地張らなくても良かったかもしれない。

世界中で一番が君だと思うから、

君の思いがあたしを動かす。
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