近くて遠い距離
案の定、控室から出て来た翼くんの周りには女の子が何人もいた。
ロビーで待つ私の姿を認めると

「ごめん!お待たせ」

そう言って、ギターを担いだまま 急いで私の手を取る。

やめて――!
ファンの子の視線が痛いよ。

翼くんは黙ったまま、ずんずん歩いて行く。

どうしたの?
何か怒ってるの?
そんなに強く引っ張らなくても私はどこへも行かないよ?
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