アイのうた
私は毎日、幸せだった。

カケルと愛し合って、サチと遊んで・・・。

いわゆる、「リア充」ってやつかな?

「リアルな生活を充実してる人」のことを言うんだって!先生、知ってた?

そんな「リア充」な私の前に現れたのが、岬先生だった。

先生が初めて、うちの学校に来た時のこと覚えてるよ。

たしか先生は、結婚してやめちゃった飯田先生の代わりに、うちのクラスの担任として来たんだよね。

先生は教室の教卓の前まで来ると、思いっきり深呼吸した。

ぎこちない歩き方や強張った表情から、「この人、緊張してるなー」ってのがすごい伝わってきた。

私がのん気にそう思っていると、他の女の子たちの「キャー」っていう黄色い声援。

たしかに、先生はイケメンだった。黒髪だし、メガネかけてるし、金髪でチャラいカケルとは正反対の爽やか系だったけど、でもカッコいいのはよく分かった。

でも、カケルが大好きだったその時の私は、先生にたいして、それ以上、何も思わなかった。

一方、すごい緊張してる先生は、

「今日から、このクラスの担任になった里中岬です。よろしくお願いします」

と、何度も噛みながら言った。

すると、他の女の子たちが「カワイイ~♪」と口をそろえる。

照れ笑いを浮かべた先生は、気を取り直して、「では、授業を始めます」と言って、現国の教科書を開いた。

その様子を見て、他の子たちが「カワイイ~♪」と言った理由がなんとなく分かった気がした。
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