アイのうた
授業が終わり、先生が教室を出て行った途端、女の子たちは「めっちゃカッコよくな~い?」と口々に言った。

でも、そんな子たちも時間が経つにつれて、少しずつ落ち着いて来た。(それでも、帰りのHRで先生が来たら、また「キャー」って騒いでたけど)


そんな一日が終わり、私はカケルと学校帰りにスタバで話した後、一緒に帰っていた。

日はすっかり落ちて、辺りは真っ暗になっていた。

今日あったことを二人で色々話してたんだけど、話は当然、先生のことになったんだ。

「新しくきたアイツ、どう思う?」

カケルが私に聞く。

「別に~。いいんじゃないかな?」

私は何の気なしに答えた。

すると、カケルの表情が険しくなった。

「いいって、どういうことだよ・・・」

「え?怒ってるの?」

「いいから、答えろ!」

今まで聞いたことのないようなカケルの大きな声。

ビックリしちゃって、言葉が出てこなかったけど、どうにか答えた。

「いいって、変な意味じゃないよ・・・ただ、普通にいい先生かなって」

「お前がいいって思う男はオレだけでいいんだよ!他の男褒めたりすんじゃねーぞ!」

カケルはそう吐き捨てると、私をおいて、一人で行ってしまった。

「待ってよ!」

私も追いかけたかったんだけど、ビックリしたのと、怖くなったのとで、足が動かなくなっちゃったんだ。

カケルはプライドが高いっていうか、みんなから「カッコいい」って言われるから、少しナルシストになってるところがあった。だから、他の人が「カッコいい」って言われることが気に入らなかったんだと思う。

今思えば、そんな男とすぐに別れれば良かったんだけど、その時の私はカケルが大好きだったんだ。

だから、カケルに嫌われるのだけは絶対にイヤだった。

私は急いで、カケルに電話して謝ろうとした。

でも、携帯がない・・・。

カバンの中も、ポケットを見ても、どこにもない。

どこかに忘れて来たのかな・・・?

思い返してみると、スタバで携帯をいじった覚えがない・・・。

ということは、学校・・・?

とりあえず、学校に行ってみよう!

今日中に見つけないと、カケルに謝れないじゃん!

私は今来た道を引き返した。
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