ドキドキしてる
落とし物
ソラはいつも行くBARにいた。
疲れていたが、昼間の学校での出来事を忘れたくてお酒に頼りたかった。
「今日なんだか元気がないね?」
マスターが尋ねるが、理由なんて言えるはずない。
大した事ではないとわかっていても、やはり恥ずかしかった。
歌を聞かれたのが、長岡くんだったから…?
他の生徒にだったら平気だった?
焼酎の入ったロックグラスを傾けながら、また自問自答していた。
生徒なのに、あの子だけはなんだか気になる…。
そんなことを考えていると、横に座ってきた客が話しかけてきた。
「お一人ですか?」
(あー、今は一人で飲みたいんだってばぁ…)
と横目でチラリ、目線をやると…
(っ?!なっ長岡くんっ??)
「うそ!なんで!!」
「センセイ、みーつけたっ!」
しばらく状況が把握できずにいたソラは…少しの間、固まったまま
長岡を見つめていた。
「センセイ、今日屋上でこれ落としていったよ」
と長岡が差し出す手の中に、マッチがあった。
この店のマッチだ。
(っ!あのとき落とした?!)
ソラは屋上に出たときにたまに吸う、タバコ用にこの店の
マッチを持っていたのだ。
「??これ見てここに来たってこと?!」
それでもやっぱり理解できないソラはまた、しばらくの間長岡を見つめていた。
「ここに来たら、センセイに会えるかなーって思って♪」
(ウソでしょう…?)
「っていうか!こんなとこで先生って呼ばないでよっ」
急いで、小声で注意する。
「それより!あなた未成年でしょ?!ダメだよ夜のこんなとこに来たりなんてしたら!!」
また小声で必死に話す。
「あ、俺なら大丈夫だよ。二年留年してるから、ちょうど二十歳!」
(へ…???)
「うそ…?…聞いてない…?よ…。」
「うん、だって言ってないもん。」
(そう…じゃあまぁ、大丈夫かぁ…。)
「ってイヤイヤっ!そうじゃなくて…!へ?どうなんだろ…いいのかな??
いいの??歳が大丈夫ならいいの?!高校生だよねでも!」