桃色ブルー



「嫌なことは楽しいことをして忘れちゃおう!」


そう言ってシュルッと制服のリボンを取った。普通男はドキッとするはずなのに由希はこっちを見ようとしない。

次はパチンッと制服のボタンを外した。やっぱりこっちを見ない。


由希は今なにを考えてるのかな?

佳奈は由希だけのことを考えてるのに。

なんとなくムカついた。それは由希が佳奈のことを見ないからじゃない。 


由希の頭の中に違う女がいる気がして。

王子様は誰にも本気にならないはずなのに。


「由希、楽しいことしないの?」

「するなら勝手にしろ」


……え、していいの?

胸がドキドキした。


由希は佳奈のものじゃない。

きっときっとこれからも佳奈のものにはならない。


シュルッ……。由希のネクタイをほどいた。

王子様はみんなのもので、本当は佳奈だけを見てほしいけどそれはたぶん叶わない。

でも今だけは佳奈を見て。

頭にいる誰かのことは忘れて。

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