桃色ブルー



「由希って本当は優しい人だと思う。でもね人って冷たくされたら冷たくしたくなるし、優しくされたら優しくしたくなるんだよ」


佳奈なに言ってんだろう。ただでさえバカな女だと思われてるのに。

でも言わずにはいられなかった。

これは最初で最後の大大大チャンスだから。


「だからね、由希がこんな風に話しを聞いてくれたらみんな話しを聞いてくれるし、優しくしたらきっと優しくしてくれるよ」


佳奈だって本当は分かってた。由希がなにか人に言えないような悩みを抱えていること。

もしかしたら……佳奈以外にも気づいてる人は沢山いるのかもしれない。それでもみんな絶対に由希に聞いたりしない。

もう聞く前から教えてくれないと決めつけていたから。

佳奈もその一人。


由希になにかをしても絶対に応えてくれないし、そんなことをしても無駄だってきっとみんな思ってる。

由希には沢山の壁があるけど、自ら由希に壁を作ってたのはみんなも一緒だ。

応えてもらえるかどうかが問題なんじゃなくて実行することに意味があるんだ。

佳奈も怯えずに由希の心に入れば良かった。


もう由希の心にはあの子がいるからダメだけど、もっと早くあの子と出会う前に冴木由希という一人の人間として見てあげれば良かった。
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