桃色ブルー
王子様の名前ってどんな名前?
白馬様とか白鳥様とか?
休み時間の終わりが近づいてきたから佳奈は3階から2階に降りていた。
佳奈の学校は一年生が3階、二年生が2階、三年生が1階だった。
優芽なら名前を知ってるかもしれない。教室に戻ったら聞いてみよう!
ウキウキで階段を降りていたら、3階に上がっていく男子とすれ違った。
うつ向いてて顔は全然見えなかったけど、ビビビッってきた。今までにないくらい。
佳奈はすれ違い様に男子の腕を掴んだ。
男の子なのにすごく細くて、もしかして佳奈より細いんじゃ……ってそうじゃなくて!
男の子はゆっくりと佳奈を見た。
なにも言わずにただ無言で。
目が合った瞬間、また身体中に電気が走った。
色素の薄い茶色の髪から見えたビー玉みたいな目。
「王子様だ……」
気づけばそんな言葉が自然に出ていた。
佳奈は少しだけ期待をしていた。きっと王子様だから声も綺麗な声なんだろうなって。
きっと優しく『なに言ってるんですか?』って笑ったりして。でも王子様は勢いよく佳奈の手を払った。
……あ、あれ?
そして一言「うざっ」と言って階段を登って行ってしまった。