おかしなあなた
風見…

って、げっ!!

わたしが目をひんむいていると
「あいちゃーん、これはダメなんじゃない?」
と側に置いてたタバコのケースをわたしの目の前で振る

「黙ってて…お願い」
「んーじゃぁお願い聞いて?」

ここは素直に従うしかない。
「何?」
こいつ意外に金せびったりすんのかなと思っていると
不意に手をとられ
「ゆーびきーりげーんまーん♪もうタバコは吸いませーん♪」
と音程をフラフラさせながら歌って
「ね」とさみしそうな顔で笑った。
「はい…」
その笑顔が妙にわたしの心を捕らえて、ちゃんと守らなくっちゃと強く思った。

「よしっ」
と言ってわたしの横に腰掛け、もたれかかってくる
「えっ…ちょっと、風見君、さっきの娘はいいの…」
と言いかけてわたしは自分の口に蓋をした。
見てたのばれるじゃん。

「あー見てたー」
と風見がいたずらに笑う。
「いや、ほら、先生だとまずいと思って」
とあたふたしながら
「ま、でも彼女出来てよかったね」
と言うと、風見は

「…?」
と不思議そうな顔をした。

何とぼけてんだ、こいつ。
その頃にはわたしはすっかり饒舌になっていて
「だってキスしてたじゃん…ぁ」とまた口を滑らせた

「あいちゃーん、へんたーい」
と言いながら風見がわたしをつつく、

そして

「俺には好きって気持ちがわからないんだ」


と真面目な顔でわたしを見た。
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