おかしなあなた
教室の扉を開けると
ふわっと甘い匂いが鼻をくすぐる

「甘…」
とわたしが眉をしかめていると、マシュマロの袋を抱えた風見 瞬(カザミ シュン)が近付いてきた。

「愛ちゃんも食べる」
ほとんど話したこともないわたしのことも'ちゃん'付けで呼ぶようなところが苦手。

「せっかくだけど、甘い物得意じゃないから」
とやんわり断ると、風見は
「女の子なのに」
と呟いた。
その一言がぐさりと刺さる。普段ならこんな一言気にも止めないだろうに、今日のわたしはやっぱり弱ってる。
「愛ちゃん…?」
と風見が立ち尽くしたわたしを覗き込む。
わたしは我にかえり、
「あんまりわたしの側でお菓子食べないで」
と言い放って自分の席へ向かった。
風見は少しさみしそうな様子で女の子達が集まっている入り口近くの自分の席へ戻った。

甘い物なんか大嫌いよ。
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