カベの向こうの女の子
それにあいつは俺が春菜を誘拐したと思ってる
変に刺激、したくない
春菜はスプーンを動かす手を止めて、言った
「普通に、好きだよ。良い先生なんだよ」
「ふーん」
良い先生…
いったいどうやったらそれに出会えるのか
俺にはわからない
一般的な生徒に好かれそうとは思っていたけど、春菜も例外じゃないみたいだ
「あんまり嫌いな人、いないんじゃないかな」
「人気…、なのな。若いし」
「うん。数学の先生なんだけど、授業わかりやすいし!それにたくさん面白い話してくれるの。みんなのこと惹き付けるような、旅行の話とか学生時代の話とか。やっぱり人生経験もあたしたちより長いから、色々豊富ってゆうか…、いろんなところで勉強になるの」
「なるほど。すげーな」
俺はハンバーグを口に放り込んだ
あの教師は、口が上手いみたいだ
普通の生徒は、若くて愛想の良いちょっと口の上手い教師なんて、すぐ好意を持つ
でも俺はなんとなくわかる
あいつは良い先生ぶってるだけ
魅力的に自分を作ってるだけ